2012年7月28日土曜日

うつわの事と、食べる事と、生きる事

灰釉粉引徳利

粉引面取珈琲マグ

粉引鎬珈琲マグ


はじめて手にした「うつわ」は
なんともない粉引のカップでした。

その時、お店の人が

「大事に育ててあげてくださいね」
と言ったのです。

育てる?

ポカーン感が伝わったのか、
店の人は奥から使い込まれた同じ作家の
カップを見せてくれました。

それは葉脈のようなクモの巣のような
模様が内側にあって、
おなじ器でも、

なんというか、貫禄がありました。

まるで新入社員と重役ぐらいの差が。


それが、うつわの魅力に足を踏み入れた
瞬間だったと思います

使い込まれていくことで変化し、育つうつわ。
生活の一部として使い、育てる楽しみを
知りました。


陶器には貫入(かんにゅう)といわれる「ヒビ」があります

土と釉薬の収縮率の差で生じるものですが

この貫入に、お茶や珈琲の色素が沈着し
模様を成していくわけです

白磁などと比較して「強度」の点から言うと、「失敗」なのですが
古くから萩や唐津、瀬戸等では茶陶として
あえて貫入を趣として捉えてきました



うつわを大事に育てる人は
食事をおろそかにしない人になります。


食事をおろそかにしない人は
生きる事をおろそかにしない人です。


食べるもので、人は作られる。




ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが
うつわを選ぶことは、生きることを楽しむこと
につながると思っています。




余談ですが

カップ麺

丼に
うつすだけでも、
案外おいしかったりする



2012年7月25日水曜日

猛暑




暑い。

暑すぎて、もう、逆に気持ちがいい。

工房にはもちろんエアコンなどはなく

年季の入った扇風機がブンブン現役で活躍している。



熱風がかき回されるだけの

工房での作業は、

まさに自分との対決である。


そして時を同じくして、
遠くロンドンでは

自分自身との対決を続けるアスリートたちの
祭典が始まろうとしている!

(…ちょっと強引な気がしますが)


ぼくも、がんばらなくては!


彩色炭化カップ

炭化カップ

飴釉輪花小鉢



飴釉鎬カップ


粉引鎬カップ

2012年7月23日月曜日

梅雨明けの空

灰釉刷毛目花瓶



しばらく更新が滞ってしまいました。

何をしてたかというと



ただ黙々と、ロクロに向かっていました。


アウトプットし続けると

ある時、ふっと止まってしまう


そんな時は
新しいものや、もともと自分の中にあるもの
とじっくり向き合い、それらを咀嚼し、
飲み込まなければならない

楽しみ続ける事は、決して「楽」ではない。

苦しみの先に、ものづくりの喜びが
あるのだと、近頃よく思います



さて、福岡は梅雨明け。

いよいよ夏本番。

2012年7月11日水曜日

足跡

灰釉粉引鉢
















いつも前を向いて

歩き続けられるわけじゃない


それでも

背中を押してくれる人、もの、言葉、音楽、記憶


まわりには支えてくれるたくさんの力がある


不安の中にいると

そういうものが見えなくなってしまうだけで。



なんだ
ちゃんとあるじゃないか





2012年7月5日木曜日

あめいろ


飴釉鎬ポット
















『世間の多くの人々は

自分のエネルギーの半ば近くを

もともとありもしない威厳を護る事に費やしつつ

汲々と人生を送っているのです』


レイモンド・チャンドラー

「The Long Goodbye」より




最近のニュースを観ていて

ふと、この小説の言葉を思い出した